のぞみの広場

1秒は長い? 短い? ケンカをしないために

No.106
希学園 算数科講師 森本 弘


 突然ですがこの一曲を紹介します。え? 算数の話をしないのかって? まあいいじゃないですか。森本が大好きな曲なんですよ。
 ベートーヴェン作曲のピアノソナタ「悲愴」の2楽章、名曲中の名曲です。是非調べて聞いてみてくださいね。


 さて、色々な人が演奏しているこの曲を聞いてみると、演奏者によって曲のスピードが違うのが分かります。誰一人として同じスピードでは弾きません。みんな適当に弾いているのでしょうか。
 普通は曲の始めにスピードを決める言葉が書いてあります。楽譜の左上にある「Adagio(ゆっくりと)」がそれです。
 「ゆっくり」とは、中々困りましたね。森本の「ゆっくり」と、これを読んでいるあなたの「ゆっくり」は違うでしょう。世界中探しても、自分と同じ「ゆっくり」を感じる相手はいないと思います。
 ええ、音楽はそれでいいんです。私のスピード、あなたのスピード、誰かのスピード。みんな違う感覚があるから面白くなるのです。


 でも普段の生活ならどうでしょう……?「一緒にゆっくり歩こうね」と言っても、みんなスピードが違います。また同じ人でも、そのときの調子でスピードは変わるものです。
 これは大変です。場合によってはケンカになります。どうしたらいいのでしょうか。


 そこでようやく算数の話になります。
 だから世の中に「単位」というものが生まれました。例えば「秒」。この1秒を長く感じるか、短く感じるかはみんな感じ方はバラバラですが、基準を決めてしまえばみんなが同じ時間で動くことができます。もうケンカしませんね。単位はみんながケンカをしないための道具だったのです。


 今では全世界基準で色々な単位が決められていますが、昔は国や地域ごとにそれぞれの単位が決められていました。日本では昔は「不定時法」というもので時間を計っていました。一日をある方法で十二の「刻(こく)」に分ける考えで、入試にも出たことがあるような有名な話です。


 ということで、今回は単位のお話でした。最後のおまけとして音楽の話に戻ってみましょう。時間の単位が関係する珍しい曲です。
 大体の曲は演奏スピードをある程度自由に決めてもよいのですが、タイトルで演奏時間を決められている曲があります。
 「4分33秒」という曲です。この曲で演奏者は誰も音を出しません。動きません。無音のようなものを楽しむのです。この時間、273秒は長いでしょうか、短いでしょうか。それはあなたの感覚次第ですよ。

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