のぞみの広場

サクラサク?

No.12
希学園 理科講師 奥田 亮則
サクラサク?

 毎年春になると、サクラ(ソメイヨシノ)の開花がいつ頃になるかと、テレビの天気予報でもよく取り上げられます。なぜか今年は秋になってソメイヨシノが開花したというニュースが流れました。


 最近は不時不食(季節はずれのものは料理に使わない)という言葉もあまり使わなくなりましたが、「旬の野菜や果物」という季節感がどんどん無くなっていく中、とうとうサクラまで季節感を無くしたのかと思いきや、これにはどうも科学的な理由があるようです。


 最近は異常気象により、天候が例年通りとはならないケースが多いですが、特に今年は台風による大雨が話題になりました。また、9月下旬になって寒暖の差が激しくなり、こういったことが、季節外れの開花につながったのでは、と言われています。


 もう少し詳しく説明すると、ソメイヨシノが開花するためにはまず芽(花芽)ができる必要があります。これは夏頃にでき、そのまま休眠に入ります。その後いったん寒い冬を経験することで休眠から目ざめ、春の気温上昇とともに開花します。また、葉があると開花を妨げる物質がサクラの中にできるため、開花しにくくなります。


 つまり、今回のソメイヨシノの開花は、この休眠からさめるような寒さを経験してしまったために、またその後の急激な気温の上昇、さらに台風によって葉が落ちてしまったために、とさまざまな条件が重なって起きたことです。


 このような現象を我々は「狂い咲き」と呼んでいますが、なにも狂っているわけではなく、ソメイヨシノには季節を感じ取って春に花を咲かせる細かい仕組みがあり、それに忠実に従って花を咲かせただけのことなのです。


 ここで出てきたソメイヨシノは春に咲く花で、人間が観賞用に品種改良したものですが、全てのサクラがソメイヨシノのように葉より花が先に出るわけではないですし、春に咲くわけでもないのです。花と葉が同時や花が後の品種もありますし、秋に咲く品種もあります。人間が作った品種の植物が起こした現象に、人間が驚いてそのことがニュースで流れているってちょっと不思議ですね。


 今回はソメイヨシノに関するニュースをとりあげてみましたが、普段のちょっとしたニュースにも疑問を持っていろいろ考えてみることはとても大切です。そこには実は深い理由があるかもしれませんし、そこから新たに発見することもあるでしょう。理科ってそういう探求心が大切な教科だと思います。普段感じた「なぜ?」「どうして?」を大切にしていきましょう。

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