のぞみの広場

私の本との付き合い方

No.64
希学園 社会科講師 門井 一生
私の本との付き合い方

 王道・定番、何のひねりもなく申し訳ないが、「読書の秋」ということで、「本」の話を。

 今の自分に影響を与えた本を1冊あげるとしたら、『知的生活の方法』(講談社現代新書、1976年)になる。大学1年生の時に読んだ本だ。大学に入って出会った最初の1冊がこれであることに、運命めいたものを感じる。一気に読んでしまうのがもったいなく思え、一日1章ずつ分けて読んだ記憶がある。著者の渡部昇一氏は上智大学名誉教授で英語学者であり、評論家。日本史に関する彼の本を高校時代に読んだことがあり、名前は知っていた。
 本の内容は、知的生活を送る上での方法論。私が今でも影響を受けているのが、本に関すること。簡単に言ってしまえば、「本は借りずに買え」だ。図書館で借りるとすると、借りたり返したりするのに時間がかかる。その時間にバイトをして本を買って自分所有にしてしまった方がいい、といった感じ。私はもともと「買う派」だったが(“本好き”同士でよく発生する論争が「買う派」「借りる派」)、その時以来今でもこの教えを守っている。図書館で本を借りたのは、小学生の時以来ない。処分した本は、雑誌と過去問程度。基本的に一度買った本は捨てない。


 さて「買い方」だが、毎日買う。それが私の基本。大学時代は、書店で気に入った本があるとメモを取り、大学の生協で買っていた。生協では本を1割引きで買うことができる。毎日買うことを考えると、この節約が馬鹿にならない。このころは、家を出るときには鞄はスカスカ、教科書とノートだけ。だいたい鞄の半分くらい。帰るときには残りの部分に本を詰め込んで、パンパン。大学の教科書は分厚いし何冊もあるし、結構な分量になる。総重量は想像にお任せする。
 最近は、ネットを活用するようになった(大学生協はもう使えないし)。といっても、アマゾンで本を買うのは最終手段。「e-hon(いーほん)」というネット書店を利用することが多い。ネットで本を注文し、受け取りは書店や宅配という仕組み。ネットで買うというと、宅配で受け取る人が多いのではないかと思うが、私は書店で受け取るシステムを利用している。もちろん理由がある。
 ネット販売が広まったことによって、実店舗の売り上げに影響が出ていることを知っている人も多いだろう。ネット販売ならいつでもすぐ欲しいものが手に入る。歩き回って探す必要もないし、重い荷物を家まで自分で運ぶ必要もない。すると実店舗で買う人は少なくなり……、だ。そして書店もこの例外ではない。いま、本屋が激減している。この現状で、「いーほん」は、本を実際に手にとって内容を確認してから買いたい私と、本を売りたい書店の、両者にとってお得なシステムである。しかも購入履歴を確認できるので、一度買った本をもう一度買ってしまうということが大分減った。


 現在の悩みは、本を置くスペースの確保だ。実は東日本大震災の時、本棚が倒れ、本の地層が出来てしまった。片付けに5時間以上かかり、横になるスペースだけ何とか確保してから就寝した。これは、備えがなくて憂いがあったパターン。家具は転倒防止策を練っておくべきだったし、本が飛び出さない対策もしておけばよかった。皆さんには真似してほしくないが、本との付き合い方は真似してほしい、いや超えてほしい。


 しかし、過去問を処分していなかったら、どうなっていたことやら……

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