皆さんは、「秋」と言えば何を思い浮かべますか?
「連想するもの」「『秋』という字と一緒に出てくることば」と考えても良いでしょう。スポーツの秋、読書の秋、勉強の秋、芸術の秋、食欲の秋……「秋」の前には色々なことばをつけることができますね。今挙げたようなことばは、どれも耳にはさんだことがあるのではないでしょうか。夏の暑さが一段落して過ごしやすくなるこの季節は様々なこと、新しいことに取り組むにはとても良い季節だということなのかもしれません。
夏休みは学校がお休みになりますから、普段とは違うことを朝から晩までたくさんできると考えると夏も素敵ですが、やはり夏の日中の暑さはなかなか厳しいものがあります。熱中症も怖いですしね。
一方で冬はというと、雪のふる様子は見ているだけでもなんだかわくわくしてきますが、こちらもやはり朝夕の寒さは厳しいものがあります。
春と秋はそのちょうど中間、過ごしやすい季節として日本に住んでいる人は昔から親しんできました。
その中でも、秋はどうやら日本人にとって一番気になる季節だったようで、1200年ほど前、奈良時代の末期には成立していたといわれる日本最古の和歌集である『万葉集』でも秋を詠った歌が一番多く、額田王(ぬかたのおおきみ)が詠んだ「君待つと 我が恋ひ居れば 我が宿の 簾動かし 秋の風吹く」(あなたのことを待って恋しく思っていたところに、まるであなたがやってきたかのように秋風が簾(すだれ)をゆらすのです)という和歌はとても有名です。続く平安時代には『古今和歌集』という和歌集に「秋来ぬと 目にはさやかに見えねども 風の音にぞ おどろかれぬる」(秋がやってきたことははっきりと目にみえてわからなかったけれども、風の音ではっと気がつきました)とも詠まれています。「秋」は「風」といっしょにしんみりと感じることが多かったようですね。
このように昔から、四季と季節の移り変わりを敏感に、そして深く味わってきた日本人ですが、最初に挙げたようにもちろん今でもそれぞれの季節を大切に感じますし、秋は特に好きな季節だと考える人が多いようです。現代の作品でも、詩だけでなく物語でもこの「季節」に対するイメージを上手に取り込み、特に秋は人生を四季になぞらえて全盛期の夏をすぎて「美しく染まる紅葉」や「育ちきったものの収穫」、「後進にゆずる老い」といった印象を抱かせるように書かれる作品が多いのです。
今まさに「読書の秋」到来。お話の中に季節や季節を感じさせるものが出てきたら、イメージをぜひじっくりと深く味わってほしいなと思います。