「天災は、忘れたころにやってくる」は、大正時代から昭和時代初期に活躍した物理学者・随筆家である寺田寅彦がのこした言葉とされています。天災(自然災害)は、そのおそろしさを忘れたころに起こるので、日頃から用心や備えを怠ってはならないという、いましめがこめられています。
9月1日は「防災の日」ですね。「防災の日」が制定されたのは1960年です。9月1日に決まったのは、関東大震災が起こった日であることや、9月1日前後は1年で台風が多く上陸する時期であることなどに由来しています。1982年以降は、9月1日をふくみ1週間が「防災週間」と定められ、国民全体で災害への備えを充実強化する期間になっています。
100年前の1923年9月1日午前11時58分に、相模湾を震源とするマグニチュード7.9の地震が発生しました。海のプレートの海溝へのしずみこみによって陸のプレートがはねあがって起きた地震で、この地震によって引き起こされた災害が関東大震災です。昼食の準備で火を使っていたことや強風が吹いたことから、火災による被害が拡大し、全体で10万5000人ほどと考えられている死者・行方不明者のうち、9万人以上が焼死でした。
震災は悲劇です。一瞬にして多くの人の命が奪われ、築いてきたものが崩壊し、当たり前のことが当たり前ではなくなり、日常のすべてが変わります。物理的な回復はもちろんのこと、心の傷の回復にも長い時間を必要とします。できればそんな状態はごめん被りたいところですが、しかし人という存在は、しなやかに強いものです。長い歴史の中、人も社会も試練を経て成長してきました。関東大震災もまたそのきっかけになったのです。関東大震災に見舞われて、更地のような状態になった関東地方には最新鋭の工業技術が取り入れられ、結果的に工業地帯が広がることになったのです。このときの復興計画を担ったのが、後藤新平でした。大規模な区画整理、幹線道路の整備などを計画し、復興に貢献しました。
チャンスは試練とともにやってくる。
災害から、私たちは多くを学ぶことができそうです。