のぞみの広場

少年易老學難成 一寸光陰不可輕

No.136
希学園 国語科 明石 翼
少年易老學難成 一寸光陰不可輕

 タイトルに何やら難しい言葉が書いてありますが、この言葉に見覚えはあるでしょうか? 特に後半部分は希学園のどこかに書かれている文言です。どこに書いてあったのか、ちょっと考えてみましょう。すぐに気がついた人は鋭い! 目黒教室の入り口(階段を上って校舎に入ったすぐのところ)のボードに書かれていますね。正しくは以下のような詩となります。(   )内は日本語での読み方です。

 

 少 年 易 老 學 難 成 (少年しょうねんやす学成がくながたし)

 一 寸 光 陰 不 可 輕 (一寸いっすん光陰こういんかろんずべからず)

 未 覺 池 塘 春 草 夢 (いまめず池塘ちとう春草しゅんそうゆめ)

 階 前 梧 葉 已 秋 聲 (階前かいぜんようすで秋声しゅうせい)

 

 これは「漢詩」と呼ばれるもので、(誰が詠んだものなのかは諸説ありますが)鎌倉時代から室町時代にかけて中国か日本で詠まれたものとされています。日本では明治時代の教科書に収録されたことから有名になりました。内容はなんとなく分かるような分からないような……というところでしょうか。読み方は上に書いておきましたが、内容を詳しく書くと以下のようになります。

 

 若い者もすぐに年をとってしまい、学問はなかなか成就させることが難しい。

 そのため、わずかな時間も決しておろそかにしてはならない。

 池沼に生えた春草の上に寝そべって夢を見ていたと思ったら

 玄関の石段の前では、もう青桐の葉が秋の風に吹かれて寂しげな音を立てている。

 

 上2段と下2段でそれぞれ時間が経つことの速さを詠んだ詩ということになりますね。暑い暑いと思っていた気温も一気に下がり、過ごしやすい日が増えてきました。皆さんが登塾のたびに見ているカウントダウンボードの残り日数も、気がつけば2桁日数に突入しています。時間がびっくりするぐらいのスピードで進んでいるというのは今の皆さんが実感しているところではないでしょうか。昔の人も今の人も、住んでいる国が違ったとしても、人間の感性というものは案外似たようなところがあるのだなと思います。

 時や場所が違っても変わらないものがある一方で、現代社会はめまぐるしく技術が進歩していて色々なものが変わっていく時代でもあります。私立中高、中学入試というものはこの両方がどちらも反映されていくものなので、皆さんの先輩や保護者世代である10年前、20年前……と様変わりしている内容、変わらない内容が混在しています。昔から変わらず学校としての芯がぶれない古豪の学校、常にその時代の最先端を取り入れていこうと変革を求める学校。どちらが良いという話ではなく、どちらにも学校の信念があるということですから、自分が描く未来像(大人になった後の話ではなくてもかまいません。どんな中学生活を送りたいのかということで良いのです)と学校の信念、校風が合っているところを選んでいくのが重要です。

 実はこの「学校の信念」というものは入試問題にも色濃く出てきます。国語であればどんな文章を出題するのか、どんな問題を出すのか、語彙を要求するのか……と様々なところにその学校が求める「学生像」がにじみでているのです。最近の文章を出すことが好きな学校もあれば不朽の名作にこだわる学校もありますし、随筆だけだったり文学的文章だけだったりの出題にこだわる学校もあります。志望している学校であれば、合う/合わないではなく自分が合わせていくことも重要なのです。なんと言ってもその学校で人生での青春期間となる、大事な6年間を過ごすことになるわけですから。

 ここからの皆さんは、自分の志望校の専門家になることが求められます。「この学校のことが一番好きなのは自分」「この学校のことを一番よく知っているのは自分」「この学校の入試を一番わかっているのは自分」となっていきましょう。そのための準備期間がここからのラスト92日です(このページの掲載日である11月1日からカウントしています)。一寸光陰不可輕、寝ても覚めても自分が行きたい学校のことを考えましょう。自分がその中学に入学し、家から学校に行って入学式で(制服のある学校であれば)制服を着て写真を撮っているところを想像しましょう。今の辛さ、大変さはこの想像を実現させるためにある!

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