タイトルにある疑問、小学生のみなさんは考えたことがありませんか? 勉強以外の習い事や遊びにもっと時間を割きたいと思ったときなんかに考えてしまうのではないでしょうか。この疑問に対して、誠実で正直者な私は講師職について20年近くずっと同じことを返答します。「そりゃ将来金を稼ぐためでしょ」と。自分や家族がいいなと思う中学校に行って、そこで平均より圧倒的にいい環境でさらに学習をして、そこからやっぱり圧倒的に就職に有利な大学に行って、自分の興味のある職に就いて金を稼ぐ! 高確率で幸せ!! 大事なことですよね(あ、合格は決してゴールではないってここでわかりますよね?)
まぁこれしか書かないとヤマサワの脳内がカネカネカネでできているように誤解されてしまいそうなので、そうじゃないことも考えているよ、と一応アピールしておきましょう。何のために学習をするのか? 「騙されないようにするため」という理由もありますね。ちょっと消極的な理由かな~とおもいつつも、これも大事なことですよね。○○詐欺~みたいなニュース、よく見かけます。どうしても悪い人はいるもので、そういう悪い人に騙されないようにするためにも知恵、考える力をつけておくべきです。私は算数科の人間なので、算数に関係するちょっと騙されそうなものをみなさんに紹介します。せっかくなのでこの場で少し考える力を身につけちゃいましょう。
「L(リットル)」という単位がありますね。かさ(体積)の単位です。「1Lってこのくらい!」という大きさを想像してみてください。多くの人が冷蔵庫に入っている牛乳やジュースのパックを想像するのではないでしょうか。それなりに高さもありますよね。さて、この1Lを「mL(ミリリットル)」という単位に換算すると1000mLになることはかさの学習をしている2年生~6年生の人は知っているでしょう。さらに「㎤(立方センチメートル)」という単位がこのmLと同じ大きさを表すことも3年生以降で習いますね。かさが1000㎤になる立方体の1辺の長さは、□×□×□=1000で考えられます。低学年でもかけ算を知っている人は、□にあてはまる数を考えてみてください。10×10×10=1000になりますね! つまり1辺の長さが10㎝の立方体のかさ(体積)が1Lなのです。1辺の長さが10㎝の立方体がどんな大きさなのか、定規などを使って調べてみてください。……思ったよりちっちゃくない? もちろん1Lの牛乳パックには、当たり前ですがパックにパンパンに牛乳が入っているわけではないので、容積(パンパンに牛乳を入れたときの牛乳の量)は1Lよりも多いはずです。だから思ったより小さくても当たり前と言えば当たり前ですが、それをふまえても小さく見えるでしょう。しっかり計算のできる人は、ぱっと見の大きさで騙されにくくなりますね。
もうひとつ例を出しましょう。みなさんは「確率」という言葉を聞いたことがありますか? 天気予報で使われている「降水確率」などのアレです。小学校6年生で「確からしさ」という言葉で学習します。たとえば普通のさいころを1回投げて2が出る確率は、1/6(6分の1)、というように表現します。同じように、2以下が出る確率は2/6=1/3、4以上が出る確率は3/6=1/2ですから、「2以下より4以上の方が出る確率が高い」と言うことができます。
では問題です。ハートのA、スペードのA、クラブのA、ダイヤのAの4枚のトランプが袋に入っています。この中から2枚のトランプを取り出すとき、同じ色が出る確率とちがう色が出る確率ではどちらが高いでしょう。同じ色もちがう色も同じ1/2? 黒と黒、黒と赤、赤と赤があるから同じ色が2/3でちがう色が1/3? こんなふうに考えているうちに混乱してしまいますね……。なおどちらも不正解です。
2枚のトランプを取り出す、というのはよく考えると1枚のトランプを取り出し、その次の瞬間にもう1枚取り出す、というのと同じです。つまり1枚目、2枚目という言い方ができます。1枚目がハートのAだったとすると、2枚目が同じ色になるのは残り3枚のうちダイヤのAのみです。1枚目がスペードのAだったとすると、2枚目が同じ色になるのも残り3枚のうちクラブのAのみです。このように考えると、1枚目のカードと同じ色を2枚目のカードにつかむ確率は実は1/3なんですね。人によっては自分の感覚とちがう答えで戸惑ってしまうかもしれません。確率の計算をすることができれば、こういったところで騙されにくくなるわけです。
いかがでしたでしょうか。算数のほんの一部を紹介しただけですが、勉強するとこのような生活の知恵をつけられるわけです。たくさん学習して、騙されない頭をつくり、むしろ自分を騙そうとする人を騙し返して撃退しちゃいましょう! ……いや決して「人を騙せるようになれ!」というわけではないですよ!!
「何のために学習をするのか」? それはいろいろなことを知って、人生を豊かに幸せにするため。算数だけじゃないです。国語も、理科も社会もいろいろあります。ほら、ヤマサワはカネカネカネじゃないでしょう?