のぞみの広場

伝えたい思いと伝わる言葉、伝わる字

No.124
希学園 国語科 明石 翼

 このところ朝はまだまだ寒い日が続きますが、昼間は少し暖かさを感じる日も増えてきました。少し前までは昼でも寒く、雪が降る日もあったというのに三寒四温、季節の移り変わりはあっという間です。二月からスタートした新年度も季節と同様に気がつけば二週間、三週間と過ぎてしまったように感じている人は多いのではないでしょうか。昨年度までと同じように頑張ろう! と思っていた人も、心機一転やってやるぞ! と思っていた人も、スタートしたときに考えていたとおりに進められているかどうかはともかくとして、そろそろ新年度の一週間の流れが何となく掴めてきたのではないかと思います。三月に入るこのタイミングで一度一週間のスケジュールと自分の勉強ペースを振り返り、実情にあった計画に修正していきましょう。最初に計画した予定を金科玉条とすることなく、必要に応じ柔軟に修正して効率の良い勉強を心がけていきたいところです。
 
 さて、ここからは国語科講師らしい話をしようと思います。最初の話は語句について。上に書かれている文章に出てくる四字熟語の意味は全て理解できていますか? 「三寒四温」は冬から春にかけて、三日ほど寒い日が続くとその後は四日ほど暖かい日が続いて徐々に暖かくなっていくという意味で使われる言葉。「心機一転」は何かをきっかけとして気持ちがすっかり入れ替わることを表す言葉。「金科玉条」は極めて貴重で絶対に守るべき規則や法律を表す言葉です。四字熟語は中学入試でよく出される語句問題の一つになりますが、実際の入試本番では漢字そのものを問うたり意味を聞かれたり、上に書かれているような文章の四字熟語部分を空欄にして意味が通るように書かせたり……と様々な方法で出題されます。ただ単に「言葉だけを覚えている」だけでは解けず、意味と用法までしっかりと理解していなければならない問題が最近増えつつあります。四字熟語だけでなく、文章を読んでいて分からなかったり、意味が曖昧だなと思ったりした言葉はきちんと調べて語句ノートとしてまとめておく習慣をつけておきたいところです。
 
 次に、タイトルにもある「伝えたい思い」と「伝わる言葉」「伝わる字」について。皆さんが行きたいと考えている中学校の先生方は皆さんのことを知りません。また、入学試験本番では特定の個人だけ採点基準が変動するようなこともありません(そもそも誰の答案か分からないようになっている状態で採点する学校がほとんどです)。さらに学校の先生方は、試験当日の夜や翌日、翌々日には合格発表をしなくてはなりません。皆さんが書いた答案をゆっくりじっくり眺めて「本当はどんなことが書きたかったのか」「本当に伝えたかったことは何なのか」といったことを考えている余裕はないのです。ここでは2026年度にあったA中学校の入学試験を例に考えてみることにします(長くなるので結論が分かれば良いという人は一段落飛ばしましょう)。
 
 多くの学校で朝一番早い時間の試験が国語ですが、この学校でも国語からスタートします。試験時間は8:30~9:15(国語としては少し短めの試験時間です)。試験が回収されて採点場所となる教室に答案が運び込まれるとすぐに(10:00頃~)採点が始まります。勿論入学試験が四科目だった場合には国語の採点が終わったら合否が決まるというわけではありませんから、四科目の採点が完了し、合計点を算出して合格者を決めていくことになります。この学校は翌日12:00に合格発表をするため、(中学校の先生が夜を徹して作業していると怒られてしまう時代でもあるので)遅くとも当日中には国語の採点が終わっている必要があります。合格者を決める作業、これは普段の復習テストの分布取り作業を見ていると少し想像がつきますね。合格点ギリギリのところの5点範囲内に結構人が集まっていて細かく1点刻みで点数を聞かれて合格点を決めていませんか? それと同じことをもっと大人数でやらなくてはいけません。今回選んだ学校は受験者数547名に対して188名が合格していました。当然合格者を出そうと考えている人数と綺麗にぴったり同じ人数でそろうことはほぼあり得ませんから合格点を決める作業には時間がかかります。ここに時間がかかるということは、それぞれの科目の採点は迅速に行われる必要があります。言いかえると「時間がない」のです。547名の答案といっても、もちろん一人一題ではありません。この学校では記述が6問、漢字が5問という構成でした。キリの良い数字で受験者は550名、漢字採点は考えずに記述題のみを採点したとして考えてみましょう。記述だけで550名×6問=3300問を10:00から12時間休みなしで採点した場合、1時間当たり275問。1分あたり4.5問強、つまり記述1問につき15秒もかけていられないという計算になります。通常試験は二人以上で採点して、採点結果が合わないところはさらに採点しなおしということになるので時間はもっと必要になり、人もさらに必要となります。国語科の先生が4人いれば30秒、8人いれば1分かけることは可能になりますが、中学校の先生は国語の先生だけ、というわけではないので何十人も集めてくるのは現実的ではありませんね。
 
 このことからわかることは、「皆さんが解答用紙に書いている答案は2分も3分もかけてじっくり分析してはもらえない」ということです。採点者が見てすぐに判断できない、読み取れない文字や言葉は容赦なく×(バツ)にされるか減点されていきます。「い」と「り」、「ソ」と「ン」、「末」と「未」など、「自分では正しくかいたつもりでも似た形の他の字と認識されてしまった」らアウトです。人の名前で考えたらわかりやすいでしょう。物語で「ゆい」さんと「ゆり」さんという二人の登場人物がいた場合に、どちらからの心情や様子を聞かれている問題に対する解答として、せっかく正しい内容が書かれていても名前の字を誤って読まれてしまったら点数になり
ません。中学入試の答案は、皆さんが自分の志望校に提出する「自己アピール」の場、あるいはラブレターといっても過言ではありません。美しい字である必要はありませんが、「正しい字形」で「丁寧に」自分の「行きたい」という思いが中学校に伝わるように書かなくてはならないのです。本番でいきなり字が丁寧に書ける人はいません。公開テストや復習テストだけでなく、普段自分が書いているノートの字から丁寧に書くことを心がけていきましょう。

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