のぞみの広場

コーヒーサイフォン

No.54
希学園 理科講師 飯澤 飛鳥
コーヒーサイフォン

 皆さんのお家の方はコーヒーを飲みますか?コーヒーフィルター(ろ紙のようなもの)に挽いた豆をのせてお湯を注ぐだけでなく、最近は家庭でおいしいコーヒーを入れるための機械もいろいろあります。今日は我が家自慢のコーヒーの入れ方を紹介させてください。
 以前理科の問題を解いていたところ、コーヒーサイフォンに関する出題がありました。喫茶店で見たことがあるものの、「自分で使ったことがない」とふと思い、欲しくなってお店を探したのですが、なかなか売っていません・・・
 私の育った家には大きな食器棚があり、お客様用コーヒーカップやおしゃれなグラスがしまわれていました。そういえばそこでコーヒーサイフォンを見たことがあるかも?・・・と母に聞いてみたところ、ずっとしまい込まれている、と。こうして私の実家に眠っていたコーヒーサイフォンは数十年ぶりに日の目を見たわけです。


 と、ここでコーヒーサイフォンとは何かについて、仕組みとともに説明します。
 コーヒーサイフォンとは、まず、コーヒーをつくる器具です。19世紀にヨーロッパで発明され、大正時代に日本に紹介されました。
 これが我が家で活躍中のコーヒーサイフォン(昭和うまれ)の写真です。(写真1参照)ろうとの下には、フィルター(ろ紙のようなもの。布でできています)がセットされています。
 1.フラスコに湯(または水)を入れ、アルコールランプで加熱する。
 2.ろうとに挽いたコーヒー豆(コーヒー粉)を入れる。
 3.水がふっとうしたら、ろうとをフラスコに差し込む。
 4.フラスコの湯がろうとに移動し、コーヒー粉と混ざってコーヒーができる。
 5.火を消すと、ろうと内のコーヒーがフラスコへ戻る。このとき、コーヒーの粉はろうと下のフィルターで除かれる。
 6.コーヒーをカップに注いでできあがり。


 4での「湯がろうとに移動し」は不思議だと思いませんか? フラスコ(下)から、ろうと(上)に湯が移動していくのです。
 水がふっとうして水蒸気になるときに、体積は約1600倍になります。せまいフラスコの中で水蒸気は逃げ場がなく、水の表面を押します。これが「気圧が上がる」です。水蒸気におされた水は管を通ってろうとに押し上げられます。そこでコーヒー粉と混ざってコーヒーができるわけです。(図1参照)
 ところが、このままではコーヒー粉が混ざっているので、コーヒーとして飲めません。ここでアルコールランプの火を消すと、フラスコ内にパンパンに入っていた水蒸気が冷えて水に戻り、フラスコ内の気体の体積が減ります。これが「気圧が下がる」です。これで、ろうと内のコーヒーがフラスコに戻るときに、布のフィルターを通るので、固体のコーヒー粉だけろうとに残り、フラスコにコーヒーだけが戻るわけです。


 時間がかかるし、準備も後片付けも面倒なのですが、目の前でコーヒーが落ちてくるのは楽しいですし、それを待っているのもわくわくします。コーヒー自体の味は「おいしいらしい」ですが、あまり気にしていないので、語れるほどの違いは正直わかりません(笑)。ただ、水蒸気不思議だなぁ、昔の人ってこんなの考えついてすごいなぁ、と考えながらコーヒーを味わうのも、優雅な気持ちになってよいものです。
 小学生の皆さんにコーヒーについて語りましたが、飲んで楽しむのをお薦めしているわけではないので……コーヒーの味は大人になったときに楽しんでください。

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