のぞみの広場

世界にひとつだけの……

No.107
希学園 理科講師 奥田 亮則
世界にひとつだけの……
世界にひとつだけの……
水で黄色の色素を流す
世界にひとつだけの……
これが「紅餅」

 昨年の梅雨のある日のことでした。近所の花屋さんの前を通りがかったとき、ちらと横目で見てみると珍しい花が並んでいました。オレンジ色のキク科っぽい花で、もしかしてあれは……と思って見てみると、なんとベニバナが飾ってあったのです。ベニバナはちょうど6~7月に咲く花なので、季節感があってちょうどいいなと思い、早速購入して家のリビングに飾りました。

 実は、ベニバナは昔から染め物の原料として使われる花です。飾ったベニバナを眺めているうちに、「最近おうち時間も増えたことだし、ちょっと染め物に挑戦してみよう」という考えが頭をもたげてきました。

 そして、思い立ったが吉日、すぐにもう一度花屋さんに足を運び、並んでいるベニバナを買い占めてきました。そしてしばらく鑑賞した後、花がしおれる前に花びらを摘み取り、原料を手に入れたのです。さあここからが本番です。ところが染め物をしようと思ったのはいいのですが、なんせやり方がよく分かりません。昔だったら図書館へGO!だったのですが、今は便利な世の中ですね、インターネットで調べればやり方がバッチリ出てくるのです。

 調べたところ、ベニバナから普通に色素を抽出すると、水に溶ける黄色の色素が出てきて布が黄色く染まります。これは簡単な方法なので、この黄色の布はかつて庶民の着物として使われていました。

 一方、水に溶けない色素は赤色で、この色を抽出するのにはかなりの手間がかかる上、色素はごくわずかしか取れません。よってこの赤色で染められた布は高価で、高貴な人しか着ることを許されない時代もありました。

 さあ、どちらの色にチャレンジするか、当然「赤」でしょう!


 <奥田流 紅餅の作り方>

 1.ベニバナの花びらに水を加えてよくもみ、黄色の色素を溶かし出し、水で流す×3回

 2.ベニバナの水気を絞ってジップロックに入れ3日放置(発酵するので臭いです)

 3.臭いベニバナをすりこぎの棒でたたき、せんべい状にして乾燥させる


 見事、臭くてきれいな赤い紅餅ができました。この紅餅を使って染色します。

 ここからが大変です。赤い色素を抽出するのにアルカリ性の「木灰汁」、色素をつけるために酸性の「烏梅」(梅の実を燻製にしたもの)を使います。ここで化学の知識を使い、それぞれ炭酸ナトリウムとクエン酸で代用しました。この辺は理科の先生ならではですね。

 ところで実はここまで何を染めるか全く考えていませんでした。綿がよく染まるので、綿のTシャツでもできたらいいなあ、と安易に考えていたのですが、完成した紅餅の量だとハンカチ一枚くらいしか染まらないようです。何か小さい綿はないかなと家の中を探していると、ちょうどいいサイズのものがあるではありませんか。郵便で突然送られてきた綿でできたアレです。アベノマスクです。

 うまく染まるかどうか不安でしたが、染色液からおそるおそる取り出し、高貴な色で染まったマスクを見て感動しました。世界にひとつだけの「ピンクオクダノマスク」の完成です。おそらく世界中でアベノマスクを自分でピンクに染め上げたのは私だけでしょう!


 みなさんも日常の何気ない事から突如湧いた好奇心、大切にしてみてはいかがでしょうか。

 とにかくやってみることの大切さ、最後まで完遂してこそ得られるこの感動、ああこれが勉強の楽しさだ、としみじみ思いました。

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